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大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)626号 判決 1960年5月14日

控訴人 三和ビスケツト株式会社

右代表者清算人 奥本真

右訴訟代理人弁護士 田島順

右訴訟復代理人弁護士 平井勝也

被控訴人 覚道次良左衛門

被控訴人 川俣富子

両名訴訟代理人弁護士 木村順一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

成立に争ない甲第二号証の二、第三第四号証の各一、二、第五号証、原審証人後藤治の証言により成立を認めうる甲第一号証、第二号証の一、原審での証人後藤治、同槽谷律夫の各証言、被控訴人等本人の各供述当審証人那波彦三の証言を総合して考察すれば控訴会社の当時の代表取締役たる後藤治が同会社の資金繰のため被控訴人等から各その主張の日その主張の金員を期限を確定せず借入れたことを認めることができる。右認定を左右するに足る証拠はない。

金員借入行為は、定款にいかなる目的を定めた株式会社にとつても、会社の目的遂行に必要な行為として会社の目的範囲内であり、金員借入行為が代表者の権限濫用行為である場合でも会社の目的範囲外となるものではない。金員借入行為が代表者の権限濫用行為である場合に相手方が悪意であれば、商法第二六一条第三項第七八条民法第五四条により、会社に責任がないというに過ぎぬ。

しかし前段認定を覆えし、後藤治の右借入が権限の濫用によるもので被控訴人等がそれを知つて貸付けた事実を認めるに足る証拠はない。

従つて、控訴人主張の抗弁は採用できない。

被控訴人等が控訴会社に対し遅くとも被控訴人等各主張の日までに前記各貸金につき支払の催告をしていることは前掲甲第二ないし三号証の各一、二により明白である。

よつて被控訴人等の本訴請求(損害金は当審において減縮した範囲)は正当であるからこれを認容すべくこれと同旨の原判決は相当であるから本件控訴を棄却し、民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井末一 裁判官 小西勝 井野口勤)

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